新紀元社 / Shinkigensha

そこはダメです、才賀さん!

そこはダメです、才賀さん!

シリーズ名:ナイトスターブックス
著者:麻生 ミカリ
イラスト:アオイ 冬子
定価:本体1,200円(税別)
四六 288ページ
ISBN 978-4-7753-1973-4
発行年月日:2021年12月23日
在庫:在庫あり

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本の紹介

「言えよ、俺としかセックスしたことありません、って」
(わたしたち三年前に別れましたよね!?)

おひとり様ライフを満喫する三園亜沙は、
海外事業部のモテ男子・才賀の帰国に顔面蒼白!
それというのも、才賀は亜沙にとって
唯一の元カレだったから。
関係は終わったはずなのに、
帰国祝いの飲み会でお持ち帰りされ、
抵抗むなしく熱く激しい愛撫に翻弄される。
三年半も離れていたのに彼は亜沙に執着してきて……!?

ハイスペック俺様男子(さらに性欲モンスター)×マイペースお肉大好き女子
振り回して振り回されてのすれ違いLOVE♥


「才賀さんは、才賀さんを好きな人たちの中にいればいいと思います」
「……おまえは?」
「わたしは、お肉のほうが好きです」
躊躇なく即答すると、彼はわざとらしくため息をつく。
「なるほど、そういうことなら俺も遠慮はしない」
──どうぞどうぞ、遠慮なくファンの皆さんのところにお帰りください!
彼は亜沙の肩に腕を回した。
「? 何を……」
言い終える前に、海外事業部部長がこちらに手を振っているのが見える。
もちろん、亜沙に振っているわけではない。四十代とは思えぬ美魔女と名高い部長は凌太朗を見ていた。
「才賀さん、主役がそんな隅にいたら駄目ですよ。あなたと話したい人がたくさんいるんですから」
部長の言葉に、凌太朗がうなずく。
そして彼は、亜沙の肩を抱いたまま歩きだそうとするではないか。
「っちょ、才賀さん、離して」
「そうはいくか。言っただろ。遠慮はしないって」
──むしろ、いったいいつ遠慮したことがあるっていうんですか!
ここで無理やり凌太朗の腕を引き剥がすことはできるかもしれないが、周囲の目が気になる。
とはいえ、本日の主役に肩を抱かれているというのも、それはそれで視線が痛い。
「すみません。久々に彼女との再会に盛り上がってしまいまして」
亜沙以外の人物と話すとき、凌太朗は冗談なのか本気なのかわからない口ぶりになる。
今も、カジュアルに『彼女』なんて言ってはいるけれど、これが恋人の意味なのか、ただの三人称なのかは判断しにくいと思う。現に亜沙も、どうとらえていいかわからず曖昧な微笑を浮かべるのがやっとだ。
「え? 彼女って……」
「ああ、才賀さんが新人研修を担当したんだっけ?」
「四年前か。才賀さんに研修してもらえるなんてラッキーだよね」
周囲の社員たちが、それぞれ勝手に話を進める。
なぜ、亜沙の知らない相手が凌太朗が新人研修担当だったことまで知っているのか。
それはひとえに、彼の人たらし能力によるものだと思う。
──そういう理由があって、あのころつきあってたことも秘密にしていたし。
凌太朗の人気がなくとも、新入社員がいきなり先輩とつきあうのは公表しにくいところもある。いつまでも学生気分でいるとか、会社に何をしにきているとか、言う人がいるのは想像できた。
「あの、才賀さん、わたしはこれで」
「遠慮しなくていいよ、三園」
注目を浴びるのが苦手で、さっと離れようとした亜沙を彼は逃がすものかと笑いかけてくる。
──んんん? なんか、イヤな予感が……
「彼女って言ったら、つきあってる相手って意味のほうですよ。俺たち、実は海外勤務前からつきあってました」
「えっ?」
「は?」
「なっ……」
「マジで?」
にこやかに宣言する凌太朗に、周囲だけではなく耳をそばだてていたらしい遠くのほうからも声があがった。
そして当然ながら、
「ええ……っ?」
亜沙の口からも、驚愕の声が漏れていた。
──こ、この人、何を言い出したの?
「な、三園?」
たたみかけるように、凌太朗がこちらの顔を覗き込んで同意を求める。
──つきあってません! 少なくとも今は!
そう言いたいのに、彼の笑顔の中でまったく笑っていない目が怖すぎた。
きれいな顔をしている分、眼力がすごい。
抗おう。抗わなければ。ここで折れたら、あとが面倒になる。
頭ではわかっているのに、まばたきひとつせずに「肯定しろ」と目だけで訴えてくる凌太朗を前に、
「は……はい…………」
心が折れた。
歓声がわきあがり、目の前が白くにじんだように頭がくらくらする。
「なんだよ、フランス行く前からぁ?」
「もっと早く言えよ。三園さん、三年半も寂しかっただろ」
「すみません、彼女は恥ずかしがりやなんです。それに、体裁が悪いじゃないですか。新人研修で担当した子に手を出したみたいで」
「まさにそのとおりじゃないか」
軽やかに、楽しげに、誰もが笑顔で話している。
亜沙だけが頬を引きつらせ、折れた心を癒やすためにグラスを煽っていた。もちろん肉とワインの割合は九対一で肉優勢だが──


「やじゃない。三年半分の俺の孤独を思い知ってもらうからな」
「何、言っ……、あ、ァ、才賀さん、待って、待っ……」
「待たない。俺は亜沙を好きだから、いくらでも期待させることにするよ」
「っっ……?」
つきあったところで、彼はまたどこか遠い国へ赴任する。それが海外事業部で働く凌太朗の出世コースだ。
だから、好きだと言われて期待するのはもう嫌だ。
亜沙はその気持ちを初めて素直に伝えた。
──なのに、期待させるって……。才賀さん、それはどういう意味なんですか……?
「とりあえずは、体から。こっちは期待してくれてるだろ」
「ううう、言い方が嫌です……」
無理にねじ込まれても彼を受け入れる自分を、亜沙も知ってしまった。
もちろん本日二度目というのも理由だとは思うのだが、凌太朗の先端が突き立ったとき、隘路の奥から蜜がとろりとあふれてきたのだ。
彼を求めて、欲して、濡れる体と心。
うつ伏せになったまま、脚を閉じた亜沙を凌太朗が甘く貫いていく。
「や……、あ、ダメ、こんなの……」
「駄目じゃなくて、気持ちいいって言えよ」
「だって、こんな……っ……、あ、あっ……!」
最奥に切っ先がめり込み、我知らず全身を震わせた。
ぞくぞくと淫らな快感が亜沙を支配していく。体を密着させた凌太朗が、短いストロークで腰を揺らした。
「んっ……! ん、あ、あっ、そこやだぁ……っ」
「どうして?」
「そこはダメ……っ……、気持ち、よすぎて……、おかしくなっ……ああ、ぁ!」
ぎゅっと体を抱きすくめられたまま、腰だけの動きで追い立てられていく。
──期待していいの? 好きでいてくれるの? ずっと、一緒にいてくれるの?
その疑問符は、胸の中に鍵をかけて閉じ込めたままだった。
凌太朗は亜沙を逃がさないとばかりに強く抱きしめ、手のひらで左右の胸の先端をあやしながら、緩急をつけて奥深くを穿つ。
「っっ……、ぁ、ダメ、もぉ、イッ……ちゃう……っ」
「イケよ。何度でもイカせてやる」
「や……っ……ァ、あ、ああ、ダメぇ……っ」
快楽の果てへと追い立てるのは、深奥の感じやすい部分を重点的に突き上げる彼の律動だ。
打ち震える体を容赦ない抽挿で追い上げる。
こらえきれない悦びに、亜沙がせつなく浅い呼吸をするのを知りながら、彼は休むことなく腰を打ちつけてきた。
「っっ……? さ、才賀さ、ん……?」
「足りないよな? 俺は、まだこんなんじゃ満足できない」
「わたしはもう満足です! あ、ダメ、もうほんとにダメ、無理ぃっ……」
「亜沙、言っただろ。期待していい。俺に期待しろよ。おまえのことが好きだ」
「ぁ、ああ、や……っ……、イッたの、もうイッたからっ……!」
「じゃあ、もう一度」
抱きしめられた体は、逃げることもかなわずに貪られる。
果てしない打擲音と狂おしいほどの情熱。
「無理……っ……こんなの、おかしくな……っ……あ、ああ……!」
「言っておくけど、俺はずっとおかしくなるほどおまえのことが好きだったんだからな」
達しても達しても、彼の楔が亜沙をつなぎとめていた。
奥深く穿たれ、ただ彼の欲望を受け止める。



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