新紀元社 / Shinkigensha

幻想侵蝕~引きこもりな私の単騎探遊~

幻想侵蝕~引きこもりな私の単騎探遊~

シリーズ名:モーニングスターブックス
著者:縞白
イラスト:SNC
定価:本体1,400円(税別)
四六 420ページ
ISBN 978-4-7753-2135-5
発行年月日:2024年04月19日
在庫:在庫あり

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本の紹介

災禍とダンジョン探索と日常生活。…と、その裏側?
「全部の敵部隊を殲滅するまでお家帰れないって、サイテー」

 ある日突然、世界各地で起こった異次元からの侵攻『幻想侵蝕(ファンタジー・イクリプス)』。
謎の物体『ナビゲーター』と契約した私は、プレイヤー『Rx(レクス)』となって武器と防具、そしてスキルを入手。黒い霧の塊から現れた多数のモンスターへの迎撃を開始する。……とはいえ、絶賛引きこもり中の私。他のプレイヤーとは組まず、名乗りもせず、ひっそりと目立たないようにソロ活動を続けることに。
こうして、猫の雪柳と一緒に暮らすマンションと、モンスターがいるダンジョンを往復する、ちょっと変わった日々が始まったが――。
「小説家になろう」で話題! ソロ探索ファンタジー!!

 第一次侵攻から四日後、だいぶ筋肉痛がマシになってきたので、プレイヤー契約初日に設定したきり放置していた武器と防具を確認する。
「起動(セットアップ)」
紺色のゆるいワンピースと黒のレギンス、あったかいモコモコの上着と靴下、といういつもの私の部屋着から、その一言で一瞬にして姿が変わった。
特撮ヒーロー系の長い変身シーンは無いし、魔法少女のように途中で全裸シルエットが晒されるような大惨事も無く、無駄に光ったりもしない、すこぶる安心でスピーディーな装備変更である。
装備変更後、私が手に持つのは無骨だがシンプルな機能美を感じさせるライフル。弾込めの必要がないので、その部分の部品がないこと以外は現代武器のライフルとそう違いはない。そして暴発とか弾詰まりの心配がないライフルとか最高だなと思う。
衣装は黒一色の、現代風アサシンみたいな体にぴったりフィットした長袖長ズボン、首元から口まですっぽりと隠す防寒対策用のネックガード、目を保護するゴーグル、バレッタでまとめた長い髪を押さえるキャスケット、薄い革製のような質感の手袋、膝まで覆うカッチリとしたブーツ。
ブーツの靴底は、柔らかいけれど歩くのにも走るのにも困らない謎素材で、足音が響くのを抑えてくれる。
これが私の、プレイヤーとしての装備だ。

 ダンジョンっていうくらいだから、モンスターがいてトラップが仕掛けられているんだろう、とは予想していたが、まさか宝箱まであるとは思わなかった。
だってこれ現実だし。
ナビが侵略者(インベーダー)って呼んだやつが造った空間だし。
まさかプレイヤー側に有益なものが用意されてるなんて、普通は思わないでしょ??
「あっ……! 宝箱に擬態したモンスターの可能性……!」
驚きのあまり忘れていたが、そういえば何かのゲームにそんなモンスターがいたはず。
『心眼』では判定できず、空間がそこだけ切り取られたかのように視える正体不明の物体(アンノウン)に、警戒しつつ手を伸ばして蓋を開ける。
キィィィ……、カタン。
蝶番の軋む音を立てて宝箱は普通に開き。

─── 宝箱から『魔法書「氷魔法の素養」』取得

中にポツンと置かれていた豪華な装丁の青白い本を取り出すと、そんなアナウンスが視界の端を流れていく。
「……モンスターじゃなかった」
狐につままれたような気分である。
「……しかもなんか珍しそうなアイテムだし。どうやって使うんだ?」
まだちょっとポカンとしたまま、何の気なしに本を開いてみたら、急に重さが消えて本が青白い光の球体に変化し、私の身体に吸い込まれるようにして消えた。

─── アイテム『魔法書「氷魔法の素養」』使用
─── スキル『氷魔法』取得

またしても視界の端を流れていくアナウンス。
「……うん」
なんかちょっともう、気力がごっそり持っていかれたよね。

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