新紀元社 / Shinkigensha

来世こそは畳の上で死にたい ~転生したのに前世の死因に再会したので、今世も安らかな最期を迎えられる気がしません!~

来世こそは畳の上で死にたい ~転生したのに前世の死因に再会したので、今世も安らかな最期を迎えられる気がしません!~

シリーズ名:モーニングスターブックス
著者:くるひなた
イラスト:黒埼
定価:本体1,300円(税別)
四六 324ページ
ISBN 978-4-7753-2075-4
発行年月日:2023年02月20日
在庫:在庫あり

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本の紹介

「今世の君を一生側において可愛がると断言しよう」

ワケありイケメン王子に迫られるけれど、欲しいのは穏やかな日常なんです!?
前世の因縁が絡み合うドタバタラブファンタジー♡

 ヴェーデン王国の第一王子クロードを暗殺するために、侍女に扮して彼の寝所に忍び込んだ反社会勢力マーロウ一家のロッタ。しかし傷を負わせたクロードと目が合った瞬間、ロッタとクロードは同時に前世の記憶を思い出すことに。学生だった前世のロッタは、弁護士だった前世のクロードの事務所でアルバイトしており、ある日事務所を訪ねてきた男に襲われ殺されてしまったのだった。因縁の相手との予想外の再会に困惑するロッタだったが、クロードはそんなロッタを“婚約者”に据えると言い出して!?

 シーツに埋もれてすうすうと寝息を立てていたのは、若い男だった。
私は、それが思った通りの相手であることを確認し─
(大丈夫、私なら─やれる)
自分を鼓舞するように心の中で呟いてから、目の前の上掛けをむんずと掴む。
それを勢いよく引っ剝がすと同時に、ベッドに横たわる男の身体に馬乗りになって、私は一思いに右手を振り下ろしたのだった。
ところがである。
「「─えっ?」」
目と目が合った、その瞬間。
目の前にいるのが、かつての自分と関わりがあった相手─その生まれ変わりであると、私は唐突に理解した。頭の中が彼に関する情報であふれ返り、パズルのピースが一つ一つ嵌
はまるようにして、そのときの─前世の記憶が完成していく。呆然とした心地のまま、私は口を開いた。
「せ、先生……ご無沙汰してます……」
「……ああ、バイトちゃん……君か……」

「─ボス、ねぇ……随分と偉くなったものだ」
「……え?」
ぼそりと呟かれた言葉の意味がわからず首を傾げていると、背後から先生の右腕がお腹に回ってくる。先生は人当たりのいい笑みを顔面に貼り付け、ボスに向かって左手を差し出した。
「レクター・マーロウ殿とお見受けします。お噂はかねがね」
「これはこれは……王太子殿下に名を覚えていただけているとは、一介の破落戸には身に余る光栄でございます」
「といっても、私の暗殺依頼を請け負っていた貴殿にとっては、今こうして握手を交わしている状況は本意ではないかもしれませんが?」
「……いやはや」
一般的に、握手というのは右手で行うのがマナーである。一国の王太子殿下が─そもそも、先生ともあろう人がそれを失念するとも思えず、おそらく左手を差し出したのはわざとだろう。
ボスもそれを察したようだ。一瞬鋭く目を細めたものの、すぐに笑みを浮かべて先生の手を握った。ただし、こちらも左手である。
「あわわ……」
空々しい笑みが頭上で交差する。

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